Ellaのオフィス。雨は激しく降り続け、Johnは無表情でセラピストを眺めた。

Ella: 伝えたいことがあったのね…

Johnはちょっと口を開いたが、また閉じた。

Ella: …でもそれを言わなかった。

JW: (声が乱れ)ええ。

Ella: 今、言ってみて。

JW: (涙声で)だめです。(首を振って)すみません、できません。

 

 

タクシー。JohnとHudson夫人は後部座席に座り、墓地へ向かっていた。Hudson夫人は花束を抱えている。

 

 

しばらくして二人は黒い大理石の墓標の前に並んで立っていた。花は墓標に供えられていた。

MrsH: 物がたくさんあるのよ、実験の道具をみんな箱に詰めたんだけど、どうすればいいのかわからないわ。学校に寄付しようかと思ったんだけど。

彼女はJohnを見た。

MrsH: やってくれる…?

JW: またあの部屋に帰ることはできないです-今はまだとても。

Hudson夫人は同情してJohnの腕を取った。

JW: 僕は怒ってるんです。

Johnは鼻で深呼吸をして、泣き崩れないようにした。夫人は励ますように彼の腕を優しく叩く。

MrsH: だいじょうぶよ、John。おかしくなんかないわ。彼のやり方にみんな感じることよ。

Hudson夫人は黒い大理石を眺めた。シンプルに「Sherlock Holmes」という文字があった。

MrsH: テーブルについた跡、騒音、夜中一時半の銃声!

JW: ええ。

MrsH: 冷蔵庫の中の血まみれの標本。想像してみてよ-食べ物のある場所に死体を保存するなんて!

JW: はい。

JohnはSherlockと過ごした日々を思い出して辛くなってきたのか、それをこらえるように目を閉じた。Hudson夫人はまだ愚痴を続けたが、John同様に悲しみをこらえていて、涙声になっていた。

MrsH: それからケンカ!彼のやる物騒なことみんなに腹を立てたわよ。

Johnは夫人の方を向いた。

JW: ええ、あの、ぼ、僕は実はそういうことに怒ってるんじゃないんですよ、ね?

MrsH: わかったわ。

Hudson夫人はJohnの腕を離した。

MrsH: ひとりにした方がいいわね…(また声が乱れ)…そうでしょう。

泣きながらHudson夫人は鼻をティッシュで拭い、墓標の前を離れた。Johnは墓標を見下ろし、深呼吸をしていた。そして肩越しにHudson夫人が離れるのを確認してから墓標の方に振り返って考え込むと、自らを奮い立たせながら語りかける。

JW: あの…うん。君は…君は前に、ヒーローなんかじゃないって言ったね。うん…そのとき僕は君が人間だとさえ思わなかった。でも言わせてくれ、君は最高の男だった。最高の人間だった…知り合った中で一番の人間だ。君が嘘をついたなんて、誰も僕に納得させることはできないよ。それから…そうだ。

Johnは少し鼻をすすりながら息を吐き出した。肩越しにまた後ろを見て、再び墓標を眺める。そこに歩み寄り、指先を上に乗せた。

JW: 僕は孤独だった。君は僕の恩人なんだよ(I owe you so much)。

Johnは涙ながらに呼吸を整えた。

JW: よし。

そして振り返って立ち去り始めたが、少し進んだだけでまた振り返った。こらえていた感情が溢れだし、墓標に手を伸ばしながら涙ながらに訴える。

JW: いやだ、頼むよ、もうひとつだけ、そうだ、ひとつだけ、もうひとつ奇跡を、Sherlock、僕に。どうか…死なないで…死なないでくれ。お願いだよ…僕のために、やめてくれ。こんなことやめてくれよ。

Johnはため息をつき、うなだれて顔を手で覆いながら涙を流し、その場に立ち尽くした。墓標にその姿が反射してSHERLOCKという名前が彼の胸に刻み込まれた。

 

 

やがてJohnは片手で涙を拭った。鼻をすすって顔を上げ、前にいる「親友」に向けて姿勢を正した。もう泣くのをやめたその顔はまるで軍人のようで、Sherlockと出会う前の彼を髣髴とさせた。小さくうなずいて自らにその場を立ち去る許可を与え、片方の踵で毅然と振り返り、しっかりとした足取りで墓標の前から立ち去った。

 

 

少し離れた木の下、他の墓から見えない場所にSherlockが立っていて、親友が墓地から立ち去り、視界から消えていくのを眺めていた。彼は長い間、思慮深くその光景を見つめた後で、その場を去っていった。

ライヘンバッハ・ヒーロー 9