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    BBC SHERLOCK

    日本語訳

    <非公式>

    サイト内は過去掲載分も含め、日々更新していますので

    こまめにリロード(再読み込み)をして最新の状態でご覧ください

    バスカヴィルの犬 3

    ダートムア。大自然の見事な風景の中、荒野を走る大きな黒いLand Rover jeep-Sherlockが運転している。Johnは助手席で少し不安そうに窓の外を眺めていた。

     

     

    しばらく経ち、Sherlockはひとりで巨大な岩の上に立ってあたりを眺めていた。Johnはその岩のふもとで地図を調べ、遠くにある大きな建物の集まりを指した。

    JW: あそこがバスカヴィルだ。

    彼は振り返って背後を示した。Sherlockも振り返ってその方向を見る。

    JW: あっちがグリンペン村だ。

    Johnは振り返って再び前方を見て、地図のバスカヴィル集落の左にある深い森のエリアを確認した。

    JW: そしてあれがたぶん…そう、Dewer's Hollowだ。

    Sherlockは集落とHollowの間を指した。

    SH: あれは何だ?

    JW: うん?

    Johnは首に下げた双眼鏡を取って柵と警告表示を拡大して見た。

    JW: 地雷原?技術的なバスカヴィルの軍事拠点、人が入れないように保護されてるんだろう。

    SH: 明らかに。

     

     

    その後、二人はグリンペン村へ入り、クロス・キーズ荘(※)に車を駐めた。館内にあるパブの入り口へ行くとツアーガイドと見られる若い男が旅行者集団へ向かって話していた。

    Fletcher: …一日に三回、お友達に話してください!みんなに!

    グループの間を歩き、Fletcherは大きな標識(『猛犬に用心!!』という文字と黒い狼のような絵が描いてある)のそばに立つ。

    Fletcher: 他人ごとにせず、覚えておいてください…長生きしたければ夜には荒野から離れるように!

    Sherlockは人目を憚るようにコートの襟を立て、前をかき合わせながらパブへ向かう。何気ない素振りをしようとしたがJohnがじろじろ見るので言い訳をした。

    SH: 寒いんだ。

    旅行者集団が離れ、背を向けるとFletcherは大きな狼の頭のマスクをかぶった。SherlockとJohnは外の黒板に『ブティック&ベジタリアン料理屋』とあるパブに入っていく。Fletcherは近くの旅行者カップルに走り寄って吠えた。彼らは怯み、女性は驚いて縮み上がった。

     

     

    -Henryの父親がDewer's Hollowで何かに掴まれている、幼いHenryは恐怖で顔を歪ませる。

    現在、大人のHenryは怯えていた。目を閉じなから肘掛け椅子に身を任せている。目を開き、ため息をつくまでフラッシュバックは彼を悩ませ続けた。そばにノートとペンを膝の上にのせた女性、Louise Mortimer(以下セリフ“LM”)が座っていた。

    HK: この部分は相変わらず。

    LM: どんな?

    Henryは顔へ手をやった。

    HK: ああ、他にも何かが。こ、言葉だ。

    集中して深いため息をし、再び目を閉じると、布に縫われている、または刺繍されたような文字が見えた。

    HK: 『Liberty』

    再び目を開けた。

    LM: Liberty?

    HK: (また目を閉じて)別の文字だ。(繕われた次の言葉を見ようと集中した)『In』、I-N。『Liberty In』。(セラピストを見た)どういう意味だと思います?

    彼女は首を振った。Henryは不満気にため息をついた。

     

     

    クロス・キーズ荘。Sherlockはパブの周りをぶらぶらしていた。Johnはバー・カウンターでチェックインをしている。責任者でバーテンダーのGaryは鍵を手にした。

    Gary: ええと、悪いけどダブル(ベッド)の部屋は用意できないな。

    JW: いいんだ。その、僕らはそういうんじゃ…

    Garyの満足気な物知り顔を見て、Johnは諦め、部屋代を渡した。

    JW: じゃ、これで。

    Gary: ああ、どうも。お釣りを持ってくるよ。

    JW: どうも。

    Garyが戻ってくるのを待っていると、伝票差しで留められた領収書と送り状の山が目に入った。その中に『Undershaw Meat Supplies(アンダーショウ精肉店※)』とラベルされている伝票を見つけてJohnは顔をしかめた。すばやく伝票差しからそれを抜き取ってポケットにしまったところへGaryが釣りを持って現れた。

    Gary: どうぞ。

    JW: 『a skull and crossbones(ドクロと交差した骨)』というのが地図にあって気になってるんだけど。

    Gary: ああ、だろうね。

    JW: 海賊?!

    Gary: ああ、違う、違う。大グリンペン地雷原の呼び名だよ。

    JW: ああ、そうか。

    Gary: あんたが思ってるようなのじゃない。バスカヴィルの実験の跡地だよ。80年以上前のね。何があったかちゃんと知ってる奴はもはやいないだろうな。

    近くにいるSherlockはまだうろついていて、テーブルのひとつに何か気を引くものを見つけたようだった。

    JW: (Garyに)爆薬?

    Gary: ああ、ただの爆薬じゃない。あそこに足を踏み入れたら-運が良ければ-吹き飛ばされるだけだ、そして奴らは…ちょっとした散歩をしようとしていたんだろうとでも。

    Sherlockはテーブルから興味を失い、またさまよい出した。

    JW: どうも。覚えておくよ。

    Gary: あいよ。いや、旅行を台無しにしてしまう。悪魔の猛犬に幸あれ!(くすくす笑って)テレビの、あのドキュメンタリーを観たのかい?

    JW: 最近ね、うん。

    Gary: なるほど。Henry Knightと地獄の化物に幸あれ!

    JW: 見たの?-犬を。

    Gaty: 俺が?いいや。

    彼はSherlockの向こうのドアを指した。Fletcherがちょうどパブの外にいて、誰かと電話で話していた。

    Gary: Fletcherだよ。モンスター・ウォークを旅行者に向けて開いてる、知ってるかい?あいつが見たんだよ。

    JW: 商売にはうってつけだな。

    Garyはバーのカウンターに入ってきたコックの方を向いた。そうしてる間にSherlockは玄関口へ去っていくFletcherの後を追っていった。

    Gary: ちょうどラッシュに見舞われたときの話をしてたんだ、Billy。

    Billy: ああ。たくさんのモンスター・ハンターがね。この頃はそうでもない。Twitterのひとつのつぶやきでパー。

    彼はGaryを見た。

    Billy: WKD(※若者、特に男性向けのアルコール飲料のブランド)が無いよ。

    Gary: わかった。

    Garyがその場を離れると、BillyはJohnへ話しかけた。

    Billy: モンスターやら、あの忌々しい牢獄やら、どうやって夜眠ればいいのか。ねえ、Gary?

    Garyは後ろを通り過ぎるところだったが、Billyの肩に手を置いて少し立ち止まった。

    Gary: 赤ん坊のようにさ。

    Billy: うそだね。(Johnを見て)この人はいびきをかくんですよ。

    Gary: (きまり悪そうに)おい、こら!

    Billy: (Johnに)お連れさんはいびきをかきます?

    JW: …ツマミはある?

     

     

    外へ出たSherlockは誰もいなくなったテーブルに残されていた半分飲みかけのビールを取って、FletcherのズボンのポケットにRacing Post誌(※ギャンブルの情報誌)があるのを確かめると彼のもとへ歩いて行った。Fletcherは他から離れたところにあるテーブルで電話をしていたが話を終えようとしていた。

    Fletcher: ああ…いや、だいじょうぶか?よし。気をつけて。またな。

    SH: 一緒にいいかな?

    Fletcherは肩をすくめてテーブルを示した。Sherlockはグラスを置いてテーブルのベンチに座った。

    SH: 本当じゃないんだろ?実際は見ていない…犬の類を。

    そう言ってSherlockが親しげに微笑みかけるとFletcherは警戒し出した。

    Fletcher: あんたは新聞社から?

    SH: いや。そんなんじゃない。ただの物好きだよ。見たのかい?

    Fletcher: たぶん。

    SH: 確証は?

    Fletcher: なんであんたに話す必要がある?それじゃ。

    Fletcherがその場を去ろうと自分の飲み物を取って立ち上がるとJohnがやってきた。

    JW: Henryに電話したよ…

    SH: (Johnへ)賭けはやめだ、John。すまない。

    JW: (座りながら)何だって?

    Fletcher: 賭け?

    その言葉を聞くとFletcherは態度を少し変えたようだった。

    SH: (腕時計を見ながら)僕の計画には暗闇が必要だ。(空を見上げて)恐らくまだ30分は日が出てる…

    Fletcher: 待て、待て。賭けって何だ。

    SH: ああ、僕はJohnと50ポンド(約6,000円)賭けてるんだ、君が犬を見たことを証明できないだろうってね。

    するとJohnはすぐにSherlockの考えを察して話を合わせた。

    JW: (Fletcherを見ながら)そう、パブの奴らは証明できるって言ってたよ。

    Fletcherは笑みを浮かべてSherlockを指した。

    Fletcher: ああ。あんたは金を失うだろうね。

    SH: うん?

    Fletcher: ああ。俺は見たんだ。一ヶ月くらい前、Hollowで。霧深い日だった、憶えてる。あたりがよくわからなかった。

    SH: わかった。証拠はない、だろ?

    Fletcher: いや、でも…

    SH: あるわけない。

    Fletcher: 待てよ…

    携帯電話に保存していた写真をSherlockに見せる。

    Fletcher: そこに。

    Sherlockは暗い色の毛並みで四本足の何かが遠方に写っている写真を見た。しかし草木に囲まれていて大きさを判断することは不可能だった。動物の種類でさえも。Sherlockはバカにするように鼻で笑った。

    SH: それが?ちゃんとした証拠にはならないだろ?

    FletcherはJohnに写真を見せた。

    SH: 悪いな、John。僕の勝ちだ。

    そう言ってさっき別のテーブルから拝借したグラスを手にして、飲もうとするフリをした。

    Fletcher: 待て、待てって。これで全部じゃない。みんなあそこに行きたがらない、知ってるだろ-Hollow。嫌な…気分にさせる。

    SH: おお!幽霊でも出るのか?(!)それで納得しろと?

    Sherlockは再びグラスを下ろした。

    Fletcher: もう、ふざけるのはよせ、そういうんじゃない、でも俺は何かあると考えてる、バスカヴィルから逃げ出した、何かが。

    Sherlockは疑っていることを隠そうともせず、あからさまにバカにした態度をとった。

    SH: クローン、スーパードッグ?(!)

    Fletcher: おそらく。あいつらが俺たちを煙に撒いたのか、それとも水に流したのか誰にもわからない。唾を吐けるうちはあいつらを信用しないんだ。

    SH: (電話の写真を顎で示して)これがいちばんの成果か?

    Fletcherは続けた方が良いか確信が持てず、しばらく躊躇したが、とうとう不機嫌な声でしぶしぶながら話した。

    Fletcher: MOD(国防省)で勤務する友人がいたんだ。ある週末、俺らは釣りに行くつもりだったけどそいつは現れなかった、その、遅くまで。現れたとき、紙のように白くなってた。今でも見える。『俺は今日見てしまった、Fletch』とあいつは言った、『もう絶対に見たくない。恐ろしいものだ』そいつは軍の秘密の場所に送られた。ポートダウン、たぶん、きっと、バスカヴィルか、他のどこかへ。

    近くに寄って話を続ける。

    Fletcher: 研究所には、あそこは極秘の研究所だとあいつは言ってたけど、恐ろしいものがあるんだ。犬のように大きいネズミだとか、犬も…

    バッグを探って何かを取り出して、Sherlockたちに見せた。

    Fletcher: …馬の大きさの犬。

    Fletcherは犬の足跡のコンクリートの型を掴んでいた。しかしそれはただの足跡ではなく、爪の先から肉球まで少なくとも6インチ(約15cm)はあった。

    Sherlockが驚いてそれに見入っていると、Johnはすぐさま責めたてた。

    JW: ええと、50って言ったかな?

    Fletcherが勝ち誇って微笑むと、Sherlockは財布を取り出し、Johnに50ポンドを渡した。

    JW: ども。

    不機嫌そうにSherlockは立ち上がって去っていった。Johnはグラスを飲み干すと後についていった。(※)

     

    ※クロス・キーズ荘

    …Cross Keys Innは実際はダートムアではなくウェールズにあるThe Bush Innという宿が使われている。

     

    ※Undershaw精肉店

    …この精肉店の名前に使われているUndershawはイングランド南東部サリー州の村ヒンドヘッドにあるConan Doyleが住んでいた家の名で、原作「バスカヴィル家の犬」もそこで書かれた。

     

    ※賭けをするHolmes

    …原作「青い紅玉」で、情報を語ろうとしない店員が賭け好きだとHolmesは見抜いていたため、それとなく賭けをしてわざと負け、必要な情報を聞き出す。

     

     

    その後、SherlockとJohnはバスカヴィルへ車を走らせていた。厳重に保護された施設に着くとSherlockは非常に多くの兵士が周囲をガードしている様子を観察した。ゲートに車をつけるとライフルを持った警備係の男が手を挙げた。Sherlockがjeepを止めると警備係の男が運転席の窓へ向かって歩いてきた。

    警備: 通行証をお願いします。

    Sherlockはコートのポケットを探り、通行証を手渡した。

    警備: どうも。

    係は通行証を取って離れた。前方では別の警備係が犬を使って火薬類がないかチェックしている。

    JW: (小声で)バスカヴィルの通行証を手に入れたのか、どうやって?

    SH: (小声で)この場所限定のじゃない。兄のだ。あらゆる場所にアクセスできる。その、うむ…(咳払いをした)…前に手に入れたんだ、念のために。

    警備係がSherlockの通行証をゲート室の認証機にかざした。画面にMycroftの小さな写真が映し出される。カードの持ち主はMycroft Holmes、アクセス制限なし、セキュリティーステイタスは『安全(脅威ではない)』

    JW: すごいな(!)

    SH: 何か気になるのか?

    JW: 僕らは捕まる。

    SH: それはない-まあ、今のところは。

    JW: 五分以内に捕まるさ。『ああ、どうも、僕らはあなたのトップシークレットである兵器基地へ行ってぶらつこうと思ったんです』『本当かい?いいね!入りたまえ-ちょうどお茶の用意ができたところだ』…もし撃たれなければ、だ。

    ゲートが開き始め、警備係は車の後ろへ行った。

    警備犬係: クリア。

    警備: (Sherlockの通行証を手渡しながら)ありがとうございます。

    SH: どうも。

    Sherlockはギアを入れ、車を前進させた。

    警備: まっすぐです。

    JW: Mycroftの名前で本当にドアが開くんだな!

    SH: 言っただろ、イギリス政府同然なんだ。彼らが異変に気付くまで20分くらいはあるだろう。

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    original transcripts by Ariane DeVere