Johnたちを待つ間、コートを脱いだSherlockは優雅な居間のソファに座って、あたりを見回していた。近付いてくる足音が聞こえるとちょっと座り直してハンカチを頬にあてる。

IA: こんにちは。ごめんなさい、失礼があったみたいで。Kateはお名前を聞かなかったのね。

SH: 本当にすみません。私は…

Sherlockが振り返るとIreneが部屋の入口で立ち止まる様が視界に入った。そして彼女がハイヒールを除いて何も身に纏わない姿なのに気付くと彼の声は小さくなり、言葉を失った。

IA: 動転してても偽名をちゃんと憶えてるのって大変なんじゃない?

Ireneは部屋に入ってきてSherlockの前に立った。そして彼の脚にまたがり半分ソファに跪いて、手を前に伸ばして白いプラスチックのドッグカラーを彼のシャツの襟から引き抜いた。

IA: 今-わたしたちは聖職を奪われた…

されるがままのSherlockにIreneは微笑んだ。

IA: …Sherlock Holmesさん。

Sherlockはもう演じるのを止めた。

SH: (通常の声で)Adlerさん、だね。

IA: (彼の顔を見つめて)その頬骨。その顔を叩いたらわたし傷つけられそうよ。試してほしい?

Ireneは目を細めて白いプラスチックを口へ運び、噛みついた。Sherlockが困惑してそれを眺めていると、Johnが水を入れたボウルと布巾を持って部屋に入ってきた。彼の目はまだ中に入っている水をこぼさないようにボウルを見ている。

JW: よし、これでいいだろう。

Johnはドアの端に立ち止まって顔を上げると、目に飛び込んできた光景に愕然とした。Ireneはプラスチックを咥えたまますばやくJohnの方へ顔を向ける。彼はきまり悪そうに彼女を見て、もう一度見る前にボウルへ視線を落とした。

JW: 何か間違っちゃったかな?

Ireneは動じなかったが、邪魔が入って少しがっかりしたように咥えていたプラスチックを取った。

IA: どうぞ、お掛けになって。

彼女が離れるとSherlockは動揺しているのか、ソファの上で心地悪そうにしていた。

IA: ああ、もしお茶を召し上がりたいならメイドを呼んでちょうだい。

SH: 宮殿で飲んだ。

IA: 知ってる。

彼女は近くの肘掛け椅子に座り、脚を組んで胸が目につかないよう優美な姿勢で腕を抱えた。

SH: 明らかに。

彼らは数秒間静かに品定めしながらお互いを見つめた。そんな二人をJohnは気まずそうに眺めている。

JW: お茶をいただいたよ、僕も宮殿で、もし興味があればだけど。

Sherlockの視線はまだ彼女に注がれていた、可能な限り彼女について推理しようとしている。

彼の最終的な分析は: ???????

混乱したSherlockは振り返ってJohnを見ながら分析し始めた。

首筋を見て: 二日着たシャツ

顔の下の方を見て: 電動式で安全カミソリではない

ジーンズの裾と靴を見て: 今夜はデート

JohnはSherlockが見つめ続けると眉をひそめた。

Johnの右の眉を見て: 妹に電話していない

Johnの下唇を見て: 新しい歯ブラシ

目のすぐ下を見て:スタンフォード(※イングランド北東部の街)で徹夜

脳の血管が塞がっていないことに安心してSherlockはゆっくりと再度Ireneの方へ振り返る。目を細めて彼は全ての推理力を注ぎ込んだ。彼女は自信がありそうに彼に微笑み返している。

すぐに結果があらわれた: ???????

どういうわけか彼女のことを何も推理できないので、更に混乱したSherlockは顔をしかめた。Ireneは構わず話を始めた。

IA: 変装の大きな問題点を知ってる、Holmesさん?

彼は返事をせず、ただ彼女へ眉を曲げてみせた。

IA: どんなに努力しても、それは常に自画像なのよ。

SH: 僕が顔に傷のある牧師だと?

IA: 違う、あなたはダメージを受けてる、妄想的で、それから強い力を信仰してる。あなたの場合それがあなた自身なのよ。

とうとうSherlockはシャツの襟の締め付けにうんざりして上から二つのボタンを外した。Ireneは身を乗り出す。

IA: ああ、それから、あなたを愛している人がいるわね。なぜかって、もし顔を殴るなら、わたしも鼻と口は避けるもの。

そう言うと彼女はJohnの方をちらっと見た。Johnは笑わざるを得なかった。

JW: すみませんが、何か身につけていただけませんかね?ええと、何でもいいので。(持っているものを見下ろして)布巾なら。

IA: どうして?晒されてる感じがする?

SH: (立ち上がって)Johnはどこを見ていいかわからないんだろう。

彼はコートを取り、広げてIreneの方へ差し出した。Sherlockを無視して立ち上がったIreneが近づいてきたので、Johnは落ち着かない様子で首を回し、それでも何とか彼女と視線を合わせようとしたが、目は下へ泳いでいた。

IA: いいえ。ちゃんとわかってると思うけど。

そう言いながらも彼女はまだコートを差し出し断固として視線を逸らしているSherlockの方へ振り返り、コートを受け取った。

IA: あなたについてはわからないけど。

SH: 裸の女が見たければJohnのパソコンを借りる。

JW: きっとそうするね。

SH: 没収する。

Sherlockはソファ向かいの暖炉の方へ歩み寄る。Ireneは彼のコートを着てくるまった。

IA: ええ、気にしないで。もっといい話題があるものね。さあ教えて-わたしが知るべきことを。

彼女はソファへ行って座った。

IA: あれはどうやって行われたのかしらね?

SH: 何が?

ソファへ座るとIreneはハイヒールを脱いだ。

IA: 頭を殴られたハイカー。どうやって彼は殺されたの?

彼女が意外なことを言い出したので、男たちは動揺を隠しきれなかった。

SH: ここに来たのはそのためじゃない。

IA: いえ、いえ、いえ、違うの。あなたは写真のためにいる、でもそれは起きない、それでもここでおしゃべりをしてから…

JW: その話はまだニュースになってない。どうやって知ったんです?

IA: 警察官をひとり知っているの。で、彼が何を好きかも。

JohnはぎこちなくIreneの腰掛けているソファに座った。

JW: ああ。そしてあなたは警察官が好き?

IA: 推理小説が好きなの-それから探偵。頭がいいってことは新しい色気よね。

それを聞いてJohnは少しニヤリとしたが、Sherlockは動揺を隠しきれず言葉が乱れた。

SH: クルマノイチ…

Johnが驚いて顔を上げるとSherlockは気を取り直し、ゆっくりと歩き回りながら話し始めた。その様子をIreneとJohnは生徒のように眺めている。

SH: ええ、バックファイア時の車の位置は、ハイカーと関係がある。そのことと死因である打撃は後頭部にあったこと。それが君が知る必要のあるすべてだ。

IA: わかった。教えて、どうやって殺されたの?

SH: 彼は殺されてない。

IA: 殺人だと考えていないの?

SH: そうじゃなかったと知っている。

IA: どうやって?

SH: 同じ方法だ。被害者がすばらしいスポーツマンで、最近外国旅行から戻ってきたこと、それから僕の探している写真がこの部屋にあると知っていることは。

IA: そう、でもどうやって?

SH: つまりこの部屋にあるってことだな。ありがとう。John、ドアを見張っていてくれ。誰も入れるな。

意味深長な視線を交わしてから、Johnは立ち上がってボウルと布巾をテーブルに置き、部屋を離れて背後でドアを閉じた。玄関であたりを見渡し、近くのテーブルから雑誌を取り、それを丸める。部屋ではIreneが姿勢を正して座り、疑わしげに閉じられたドアを見ていた。Sherlockは再び歩き回りながら話し始める。

SH: 男二人が、地方で数ヤード離れてそれぞれ一人きり、そして一台の車。

IA: あら。わたし-てっきりあなたは今、写真を探しているんだと思ってた。

SH: いや、違う。しばらく時間が必要だな。見つけるつもりだが君はなかなか賢い。さて、ちょっと暇ができたから、時間を超えようか。

 

彼は立ち止まって彼女の方を向いた。

SH: 二人の男、一台の車、そして他に誰もいない。

Sherlockが屈み込むと突然、まるで彼が事件現場にいるかのようになった。屈みながらPhilの車の運転席のドアへ。中では時間が止まっていてハンドルに手を叩きつけながらPhilが怒りで顔を歪ませていた。

SH: 運転手はエンジンをかけようとしていた。どこにも移動していない。

立ち上がりながら、振り返って野原の方を見る。

SH: そしてハイカーは立ち止まって空を眺めていた。

今、彼は野原に降り立ち、ハイカーの周りを歩いていた。

SH: 鳥を見ているのか?

彼はそれを疑っているようだった。

SH: 今この時に、何かが起ころうとしている。何が?

Ireneは不思議にも野原のハイカーの近くに現れたソファに座っていた。

IA: ハイカーは死のうとしている。

SH: 違う、それは結果だ。何が起ころうとしているのか?

IA: わからない。

SH: ああ、ほら、考えて。

IA: どうして?

SH: 君がその哀れな出来心で媚びを売って、気を惹こうと服を脱いでいるからだ。退屈させるのはやめて考えろ。それが新しい色気だ。

Ireneは少し悔しそうにして、真剣に考え出した。

IA: 車はバックファイアを起こす。

SH: 大きな騒音を出すだろうな。

IA: それで、何?

SH: ああ、騒音は重要だ。騒音はあらゆることを教えてくれる。たとえば…

場面はまたIreneの家の居間に戻る-彼らはもちろん実際にそこから離れてはいない-Sherlockは動きを止めた、少しして火災報知器が玄関ホールからしつこく鳴り響いた。ホールではJohnが丸めた雑誌の端に火を点けていたが、概ね吹き消されていて煙は上へと向かっていた。今は雑誌を持つ手を振って息を吹きかけ、完全に消そうとしている。居間ではIreneが振り返って暖炉の上にある大きな鏡を見た。Sherlockは顔を向けて彼女の視線を追った。

SH: ありがとう。火災警報を聞いて母親は子供の方を見る。おもしろいな、いかに火事が我々の優先すべきことを暴くか。

暖炉へ歩み寄り、マントルピースの下に指を走らせる。その下にあったスイッチを押すと鏡が上へスライドし、背後に隠されていた小さな金庫が現れた。Sherlockは振り返り、立ち上がったIreneを見た。

SH: 本当に赤ん坊をここに隠していないといいんだが。

部屋の外にいるJohnへ呼びかける。

SH: いいぞ、John。もう消していい。

 

ホールにいるJohnが燻っている雑誌の火を消すことが出来ないでいるためになかなか警報が鳴り止まない。Sherlockは聞こえなかったのかとさらに大きめの声で呼びかけた。

SH: もう消していいって。

JW: ちょっと待ってくれよ。

Johnが雑誌の端をテーブルに打ちつけて火を消そうとしていると、階段から三人の男が駆け下りてきた。最初の男は大きなピストルを掲げ-サイレンサーはとても長く、彼の欠点を補っているようだ-火災報知器を撃ち、粉砕した。警報は止まった。他の男の内の一人がJohnへ駆け寄ってピストルで狙うとJohnはすぐに手を挙げ、最初の男が歩み寄ってきて自分の前に立ち止まるのを呆然と眺めた。

JW: どうも。

居間ではSherlockが金庫へ顔を近付けて文字盤を眺めていた。Ireneは楽しそうにそれを眺めている。

SH: ふむ。こういうものには常に手袋を使うべき、だよな。もっとも大量の皮脂の付着は常に最初に使われるキーの上にある-「3」だというのは完全に明らかだ。-だがその後に続くのはほぼ読み取ることが不可能だ。六つの数字から成るコードと言える。誕生日じゃない。-侮辱しているわけではないが明らかに君は80年代生まれだ、8はほとんど使われていない、だから…

IA: コードを教えてあげてもいいけど、わかるのね?既に教えたのよ。

それを聞いてSherlockは彼女の方を向き顔をしかめた。

IA: 考えて。

 

するとドアが突然開けられ、グループのリーダー、Neilsonが入ってきてピストルをSherlockに向けた。

Neilson: 手を頭の後ろに。(Ireneへ)床に膝をつけ。そのままだ。

二人目の男がやってきて、Ireneを三人目の男に拘束されているJohnの近くへ追いやった。

JW: ごめん、Sherlock。

Sherlockが手を挙げると、NeilsonはIreneの方を見た。

Neilson: Adlerさん、床へ。

彼の仲間はJohnのそばへ彼女をひざまずかせた。同様にひざまずかされ手を頭の後ろに挙げたJohnの首の後ろにピストルが当てられた。

SH: 僕も床につかなくていいのか?

Neilson: いいえ、あなたには金庫を開けていただきたいんでね。

SH: (彼のアクセントを測りながら)アメリカ人。おもしろい。なぜ気にする?

Sherlockは手を後ろに挙げているIreneへわずかに視線を向けた。

Neilson: さあ、金庫を、早く、頼みますよ。

SH: 僕はコードを知らないんだ。

Neilson: 我々は聞いてたんですよ。あなたに教えたと言ってた。

SH: んん、聞いてたんだったら、彼女がそうしなかったことを知ってるだろう。

Neilson: 何か間違えたようだ。聞いたところでは、僭越ながらあなたがそうしなかったと、Holmesさん。

JW: 頼むよ。彼女しかコードを知らない。彼女に聞いてくれよ。

Neilson: はい。この女は自動的に警察へ通報するコードも知ってて不法侵入の警報もセットしてる。この女を信じるなと学んでるんでね。

IA: Holmesさんは…

Neilson: 黙れ。もうひとつお前から言葉が出たら-ひとつでもだ-お前の頭の中身であの壁を塗りたくってやるからな。俺にとっては難しいことじゃないぞ。

Sherlockは彼をにらみつけた。

Neilson: Archer君、三秒数えたら、Watson先生を撃て。

JW: 何だと?

SH: 僕はコードを知らないんだ。

Archerが銃口をJohnの首の後ろに押し付け、打つ金を起こすとJohnは縮こまった。

Neilson: 1。

SH: (断固として)僕はコードを知らない。

Neilson: 2。

SH: 彼女は僕に言わなかった。(声を上げて)僕は知らない!

Neilson: 今となってはあんたを信じてもいいと思えるよ。

Sherlockは鋭い眼差しで下を見つめているIreneの方を見た。

Neilson: 3。

SH: だめだ、やめろ!

Neilsonは空いている方の手を上げ、Archerを止めた。Johnは目を閉じた。Sherlockはパニック状態になり、遠くを見るような眼差しになった。

 

…それからSherlockはゆっくりと金庫の方を向いて手を下ろした。Neilsonが近くで見ていると、彼はゆっくりと指をキーパッドに伸ばし「3」それから「2」と打ち込んだ。少し躊躇して、「2」と「4」を押した。また少し間を置いて「3」と「4」を押した。音を立てて金庫のロックが外れた。Ireneは満足気に微笑んだ。Sherlockはため息をついて少し目を閉じた。Johnは膝から崩れ落ち、目を閉じた。

Neilson: ありがとうございます、Holmesさん。開けてもらえませんか。

扉を開けるためであろうボタンをひねりながら、Sherlockは再びIreneの方を見た、彼女は床へ視線を落とし、下を向いた。それから彼は金庫の方を向くと切迫した声で言葉を発した。

SH: Vatican cameos(バチカンのカメオ※)。

それを聞くとすぐにJohnは床へ身を投げた。同時にSherlockは暖炉の方へ屈みながら金庫の扉を引く。金庫の中には同じくらいの長さで補うに余りあるサイレンサーの付いたピストルがあり、引き金を引くワイヤーを仕掛けられた状態で金庫の外をまっすぐに狙っていた。銃は発砲しArcher-たまたまその前方にちょうど立っていた-は胸を撃たれた。SherlockがNeilsonのピストルを掴むとIreneは膝を使ってくるりと回り、彼女をガードしていた人物の股間へ強烈に肘打ちをした。Neilsonからピストルを奪ったSherlockがサイレンサーの端を握って彼の顔を殴ると、Neilsonは気絶して床に倒れた。Ireneをガードしていた人物が彼女の一撃に打ちのめされると彼女はピストルを奪い、彼が弱っている間に立ち上がってピストルで狙いを定めた。Sherlockはピストルを握り直して彼女の方を向いた。

SH: 済まないね。

IA: いいのよ。

倒れていた男が起き上がろうとしたのでIreneは再びピストルで顔を殴って気を失わせた。彼女の気が散っている間にSherlockは金庫へ手を伸ばして何かを取り出した。Archerを調べていたJohnが立ち上がる。

JW: 死んでる。

IA: (ピストルで男を狙い続けながらSherlockへ)ありがとう。とても観察力が鋭かったわね。

JW: 観察力?

IA: うれしい。

SH: 止せ。

JW: うれしい?

SH: もっといるはずだ。奴らは建物に見張りをつけているだろう。

SherlockはNeilsonのピストルをまだ握っていたがサイレンサーは取り外されていた。彼が急いで部屋を出るとJohnはArcherの銃を取りジーンズの後ろへ入れて彼についていった。金庫へ歩み寄って中を確認したIreneは目を見開いた。

 

※バチカンのカメオ

…なぜ「Vatican cameos」が合言葉のように使われたのかは特に説明されていない。原作「バスカヴィル家の犬」でHolmesがバチカンのカメオ紛失事件を扱っているという発言をしている。これはHolmesとWatsonのみが知る公にされていない(紛失だけでなく殺人も絡んでいたらしい)事件なので、二人にとっては危険を知らせる合図となったのかもしれない。Ireneがそれを知っていたとは思えないので、それは「女の勘」か、彼女自身の勘の良さか。また、S2の2話は「バスカヴィル家の犬」をモチーフとしたものなので、それを暗示させる脚本家の意図もあったのでは、という見方もある。

 

 

Sherlockが玄関を通って表へ出ると、Johnも後からやってきた。

JW: 警察を呼ばないと。

SH: ああ。

するとSherlockはピストルを空中へ向けて五回撃った。近くでタイヤが音を立てて急停止した。

SH: これで来る。

彼は振り返ってさっさと家の中へ戻っていった。

JW: 頼むよ、もう!

SH: ああ、うるさいな。手っ取り早いだろ。

 

 

Sherlockが居間へ戻るとIreneは金庫から彼の方へ振り返った。

SH: (Johnへ)残りの部屋を調べろ。どうやって奴らが入ってきたか確認するんだ。

Johnの姿が見えなくなると、Sherlockはポケットから金庫から取り出したものを無関心そうに軽く空中に投げてまた受け取った。それは高機能そうな携帯電話だった。

SH: バッグの中のナイト(爵位)。

IA: ああ。わたしのよ。

Ireneは手を伸ばした。それを無視してSherlockは手にしている電話のセキュリティーロック画面を起動させる。ロックを解除させるためには四つの文字が必要だった。四つの空欄の上には「I AM」、そして下には「LOCKED」。

SH: 写真はみんなここにあるんだろう。

IA: コピーだってあるわよ、もちろん。

SH: いや、ないね。データ送信か接続の類を永久に無効にしているんだろう。この電話の中にしか存在しないと証明しなければ売ることもできないだろうからな。

IA: (伸ばしていた手を下ろし)売っているって誰が言ったの?

SH: (床に倒れている死体と気を失った身体を見ながら)なぜこいつらが興味を持ったか?一体何が電話にあったのか、それはただの写真じゃない。

IA: その電話はわたしの命なの、Holmesさん。持っていかれるくらいなら死ぬわよ。(歩み寄って再度手を伸ばし)わたしを守ってくれるものなの。

JW: (部屋の外から)Sherlock!

SH: (電話を戻しIreneを鋭く見ながら)かつてはね。

Sherlockは振り返って部屋を出る。Ireneはその後を追いかけた。

ベルグレビアの醜聞 4