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    BBC SHERLOCK

    日本語訳

    <非公式>

    サイト内は過去掲載分も含め、日々更新していますので

    こまめにリロード(再読み込み)をして最新の状態でご覧ください

    スコットランド・ヤード。Dimmock警部は怒りに満ちた表情で腕を組み、自分の席に座っていた。その机の向こうではSherlockがラップトップに何か文字を打ち込んでいる。

    SH: Brian Lukis、フリーランスのジャーナリスト。自宅で殺害された…

    そして先程Johnに見せたのと同じWebサイトのページを表示させると、ラップトップの向きを変えてDimmockにも見せた。

    SH: …ドアは内側から鍵が掛かっていた。

    JW: 認めざるを得ないでしょう。酷似してる。

    Dimmockはコンピューターの画面を見ながら顔をしかめた。

    JW: どちらの場合も殺人犯は…(自分は何を言っているのかとわずかに躊躇したが何とか先を続けた)…堅い壁をすり抜けられる。

    SH: 警部、Eddie Van Coonの件をシティにおける単なるひとつの自殺に過ぎないと本気で思ってるのか?

    Dimmockは目を合わせず身悶えするばかりだった。それを見てSherlockはイライラして荒々しくため息をついた。

    SH: 言った通り銃弾についての報告を確認したのか?

    Dimmock: (うなづいて)うむ。

    SH: それで死因となった銃弾は彼の銃から発射されたものだったのか?

    Dimmock: (しぶしぶ)違う。

    SH: 違う。そう、この捜査はもっと早く動くかもしれないぞ、君が僕の言葉を神の啓示として受け止めればの話だが。

    Dimmockは言葉を失って相手を見つめるのみだった。Sherlockは机の向こうから彼の前へ屈み込み、静かに、でも鋭く言い放った。

    SH: 殺人事件の手がかりを君に提供しているんだ。(画面に映っているLukisを顎で示して)五分間、部屋に入れろ。

     

     

    Lukisの部屋。Sherlockはドアの内側、階段のふもとに警察によって貼られた立入禁止のテープをくぐって中に入った。DimmockとJohnを連れて上の階へ上がり、途中にあるものをすべて観察しながらリビングへ入っていく。床には空のスーツケースが開いたまま置いてある。そばのカーペットの上には黒い折り紙の花-SherlockがVan Coonの口の中から取り出したのと同じものがひとつあった。他にも広げられた新聞紙がいくつか散らばっている。キッチンへ入ると付近にあるそこより低いビルの屋上を窓越しに眺めた。カーテンを引いて視界を良くするとSherlockはニヤリとした。

    SH: 地上四階。それこそ住人が安全と考える理由だ。ドアにチェーンをかけて鍵を締めれば難攻不落だと思ってしまう。

    そしてまた部屋の中に戻ってきた。

    SH: 一秒足りとも別の方法があるなんて考えやしない。

    そう言うと後ろにある階段を振り返って、踊り場の上にある天窓を見上げた。

    Dimmock: わからないな。

    SH: (踊り場へ進みながら)君が相手にしているのはクライマーの殺人犯だ。

    Sherlockは箱か何かの台に乗って、斜めに傾斜している天井部分の壁に設置された天窓へ近づいた。

    Dimmock: 何をしてる?

    SH: 犯人は壁を這っていくことができる、虫のように。

    そしてロックを外して天窓を上へ開いた。

    SH: (声を落として)それが侵入した方法だ。

    Dimmock: はあ?!

    SH: 壁を伝ってよじ登り、屋上を走りぬけ、この天窓から中に入ったんだ。

    Dimmock: 冗談だろ!スパイダーマンみたいに?(!)

    SH: ドックランズ(※)でアパートを六階までよじ登り、バルコニーに飛び込んで、Van Coonを殺害した。

    Dimmock: (信じられずに笑い出して)おい、ちょ、ちょっと待てよ!

    SH: そしてもちろんそれが銀行に押し入った方法だ。窓枠を伝っていきテラスに入った。

    そう言ってしまうと台から降りて再び周りを見渡した。

    SH: 二人にどんな繋がりがあるのか調べ上げるんだ。

    するとSherlockは階段に散乱している本の山に視線を落とした。数段降りると、その中から開いたまま放置されている一冊の本を手に取った。最初のページに西ケンジントン図書館の蔵書という表記がある。音を立てて本を閉じると、それを手にしたまま階段を下りていった。

     

    ※ドックランズ

    …ドックランズ(London Docklands)は、ロンドン東部、テムズ川沿いの地域。詳しくはWikipedia「ドックランズ」

     

     

    SherlockとJohnはタクシーに乗って次の目的地へ向かった。そして二人が今乗っているのは西ケンジントン図書館のエスカレーター。SherlockはLukisの部屋で見つけた本が置かれていた棚へ進んでいった。

    SH: この本の貸出記録の日付は彼が殺害された日と同じだ。

    本の背の下の方にある整理番号を確かめながら目当ての棚へ向かうとそこにある本を手当たり次第に取り出して調べ始めた。Johnが手伝おうと向かい合った近くの棚から本をいくつか手に取ってみると、すぐに幸運を引き当てた。

    JW: Sherlock。

    Sherlockは本を取った後にできた空間を見つめるJohnの方へ振り返った。そして近寄っていくとその空間の横にある本を片手で何冊か掴み取った-Sherlockの手は大きいので一度に多くの本を掴むことができた。それからもう片手でさらに何冊か掴んで空間を拡げる。その本棚の背にはWilliam氏の部屋にあったのと同じ記号が、同じようにスプレーで描かれていた。

     

     

    221B。リビングの鏡の周りには図書館の本棚を撮影した写真が追加されていた。二人は暖炉の前に立ってそれを眺めている。

    SH: つまり、犯人は銀行へ行き、Van Coonへ脅迫の暗号を残した、Van Coonはパニックになり、家に帰ると鍵を掛けて閉じこもった。

    -Eddie Van Coonが怯えながら家の中で玄関の鍵を締めている。更にチェーンを掛けてから急いで寝室へ向かった。

    SH: 一時間後、彼は死んだ。

    JW: 犯人は図書館でLukisを見つける。見られることを知っていて本棚に暗号を描いた、Lukisは家に帰る。

    SH: その夜遅く、彼も死んだ。

    JW: (小声で)なぜ彼らは死んだんだ、Sherlock?

    SherlockはWilliam氏の顔に描かれたペンキの線を指でなぞった。

    SH: それを教えてくれるのは暗号だけだ。

    考え込みながらそう言って指先で写真を叩くと、彼の表情は鋭くなった。何か考えが浮かんだようだ。

     

     

    トラファルガー広場。(※)二人はナショナル・ギャラリーへ向かうため広場の中心へ進んで歩いていた。

    SH: この世界はコードと暗号で管理されているんだ、John。銀行の100万ポンドのセキュリティ・システムから、君が異議を申し立てたPINコードの機器まで。僕らが活動する至る所に暗号が存在している。

    JW: ああ、そうだな、でも…

    SH: でもそれらはみんなコンピューターで生成されたものだ、電子コード、電子式で秩序立てられた暗号だ。これはそれらとは異なる。古代に考案されたものだ。現代の方式で解読できるものではない。

    JW: どこに向かってるんだ?

    SH: ちょっと助言が必要なんだ。

    JW: え?!何だって?!

    驚いて笑みを浮かべるJohnへSherlockはむっとした顔を向けた。

    SH: ちゃんと聞こえてただろ。もう言わない。

    JW: 助言が必要だって?

    SH: そう、絵のことで。専門家に話を聞かないと。

    そう言ってSherlockはJohnを連れてナショナル・ギャラリーの入り口へ向かった…

     

    ※トラファルガー広場

    …ロンドンのウェストミンスターにあり、中央に噴水のある広いスペースで出来ておりナショナル・ギャラリーの入り口へ続く階段がある。詳しくはWikipedia「トラファルガー広場」

     

     

    …しかし彼らがやってきたのは建物の裏側だった。若い男性が灰色の金属のドアにスプレーでグラフィティを描いている。警察官がライフルを持っているという絵だった。鼻は豚の鼻になっている。彼は足元に大きなキャンバス地のバッグを置いて両手にスプレー缶を持っていた。その一つのスプレーで絵の下に自分の名前“RAZ”とスプレーで描いている-グラフィティの世界では「タグ」というらしい-彼はそのアートワークを完成させているところのようだ。SherlockとJohnが近づいてきても落ち着いて作業を続けている。

    RAZ: 新しい展示の一部だよ。

    SH: (無関心に)すごいな。

    RAZ: 『血に飢えた都会の凶気』ってタイトルなんだ。

    そう言ってRAZはクスクス笑った。

    JW: キャッチーだな(!)

    RAZ: (スプレーを続けながら)CSO(※)があの角に来るまで二分だな。(Sherlockの方に顔を向けて)やりながらでもいいか?

    Sherlockはコートのポケットから電話を取り出し、RAZに向けて見せていた。それを見てRAZは持っていたスプレー缶のひとつをJohnに投げて渡した。Johnは咄嗟にそれを受け取り、困惑しながらSherlockとRAZの方を見た。RAZはSherlockの電話を手に取り、William前頭取の部屋と図書館に黄色いペンキで描かれた暗号の写真をスクロールしながら眺めた。

    SH: それを知ってるか?

    RAZ: ペンキはわかるよ。Michiganのみたいだな。高圧ガスのやつ。亜鉛入りだね。(※)

    SH: 記号についてはどうだ?見覚えはあるか?

    RAZ: (目を細めて写真を見ながら)ちゃんとした言葉じゃないっぽいけど。

    SH: 二人の人間が殺されたんだ、RAZ。この暗号を解読することが殺した奴を見つける鍵となる。

    RAZ: ええ?あんたが持ってんのはこれで全部?全然足りないんじゃない?

    SH: 力を貸してくれるのか、どうなんだ?

    RAZ: 仲間にも訊いてみるよ。

    SH: 知っている人間がいるはずだ。

    男の声: (画面の外から)おい!

    三人が声のした方を振り返ると二人のCSOが彼らの方へ駆け寄ってくるところだった。Sherlockは直ちにRAZから電話を奪うとCSOたちがやってくるのと逆の方向へ走り出した。その間にRAZはスプレー缶を投げ出し、バッグをJohnの方へ蹴るとSherlockに続いてその場から逃げ出した。うかうかしていたJohnは逃げ遅れてCSOの方へ身体を向けてしまった。

    CSO: お前は自分が何をやってるかわかってるのか?このギャラリーは公共施設に指定されてるんだぞ。

    JW: ちょ、ちょっと待って。描いたのは僕じゃありませんよ。

    Johnはあわてて弁解しながら手に持っていたスプレー缶を掲げた。

    JW: これを持ってるのは、その…

    何とか説明をしようとしたが既にSherlockもRAZもいなくなっていた。自分が見捨てられたことに気付いてJohnは静かにため息をついた。CSOはJohnの足元にあるバッグを足で蹴って中に他のスプレー缶がいくつか入っているのを確認し、厳しい目付きでJohnを見た。

    CSO: 常習犯みたいだな、お前さんは。

    Johnは呆然としてCSOを見てから、ドアに描かれたグラフィティに目をやった。この状況をいったいどうやって説明すればいいのか頭を悩ませながら。

     

    ※CSO

    …Community Support Officer。またはPCSO(Police Community Support Officer)。イングランドとウェールズ地方において地域の警察に雇われている民間の警察官。管轄の地域に危険な人物、物事がないかパトロールを行うのが主な任務で、必要があれば巡査と同様に逮捕することもできる。

     

    ※スプレー、Michigan、亜鉛

    …RAZが「Michigan」と言っているのは恐らく塗料メーカー/ブランドのことだろう。これは架空のメーカー/ブランドで、実際にこのドラマで使われている(犯人が使っている黄色の)スプレー塗料は「Montana」というメーカー/ブランドのもの。“Montana”はアメリカ北西部にある州の名前でもあるので、同じ北西部にある州の「Michigan」をドラマでは使うことにしたのだろう。Michigan州の州章は『黄色』の縁取りが印象的なデザインとなっている。亜鉛は金属のサビ止めやメッキの材料として使用される。

     

     

    国立歴史博物館。AndyがSoo Linの急な退職について館長に説明を求めている。

    AG: 大事な修復作業の真っ最中だったんですよ。どうして突然辞めたりなんてするんです?

    館長: 家庭の事情よ。手紙にそう書いてあったの。

    AG: でも家族はいない、って。一人でこの国に来たんですよ。

    館長: Andy…

    AG: ほら、あの茶壷、陶磁器。あれに夢中になってたのに。何週間も修復作業をしてたんですよ。ぼ、僕には途中で投げ出すなんてとても考えられないんですよ。

    館長は厳しい表情で彼を見た。

    館長: きっとやむを得ない事情に見舞われたんでしょう。

    そう言って館長はその場を去ってしまった。Andyは気まずそうに部屋の中にいる同僚たちを見回した。彼らは二人の様子を見ていたが、もう顔を背けてしまった。

     

     

    221B。Sherlockは再び暖炉に向かって立っていた。今や鏡の上はほぼ埋め尽くされている…様々な種類の暗号や図を示した紙が更に追加されていたからだ。彼は本で何か調べている。そこへドアが音を立てて締められ、Johnがリビングに入ってきた。その音からすると彼は相当腹を立てているらしい。

    SH: (本から顔を挙げずに)随分かかったな。

    Johnは肩を強張らせ、拳を握り締めながら更に数歩中へ進んだ。そして立ち止まると怒りで目を瞬かせながらSherlockの方を向いた。

    JW: (キツく)ああ、まあな。知ってるだろ、拘置所にいる巡査ってのは急がされるのが好きじゃないんだよ!

    そう言うとまた怒りが込みあげてきたのか、しかめ面に半ば笑みを混じえながら部屋の中を歩き回り始めた。

    JW: 形式に則り、指紋や調書を取られた-火曜日には下級裁判所に出頭しなくちゃならないんだってさ。

    SH: (ぼんやりと、明らかに話を聞いていない様子で)え?

    JW: (怒りながら)僕が、Sherlock、火曜日に裁判所に!(荒々しいロンドン訛りで)ASBO(※)違反だってさ!

    SH: (まだ関心を向けず)そうか。良かったね。

    JW: (キツく)君はこの哀れな同居人に喜んで出頭していつでも罪を認めろと言いたいようだな。

    SH: (音を立てて本を閉じて)この記号、まだ嵌まらないんだ。

    するとSherlockは見ていた本を置くと、上着を脱ぎかけているJohnへ歩み寄ってまた彼に上着を着せ始めた。

    SH: だめだ、警察署に行ってもらわないと…

    JW: (Sherlockにドアの方へ押されて腹を立てながら)おい、おい、おい!

    SH: ジャーナリストについて訊くんだ。

    JW: (憤然として)ふざけるな!

    SH: (ドアに掛けてあった自分のコートを取りながら)彼の所持品は押収されているだろう。日記か、何か彼の行動を記録しているものを手に入れるんだ。

    そして二人は階段を下りて外に出て行った。

    SH: Van Coonの秘書に会う。彼らの軌跡を辿ることができればどこかで一致するだろう。

    そう言うとSherlockは先に歩いて行ってしまった。Johnはちょうど角からやってきたタクシーを捕まえた。車が寄ってきて停まろうとしているとき、黒髪で黒いサングラスをした東洋的な出で立ちの女性が道の向こう側で写真を撮っているのがJohnの目に留まった。カメラは彼の方へ向けられているようだ。Johnはタクシーの運転席の窓へ屈み込んだ。

    JW: スコットランド・ヤードまで。

    運転手: はいよ。

    タクシーの後部座席に乗り込むとJohnは座りながら女がいた方を一瞥したが、そこにはもう姿は見えなかった。

     

    ※ASBO

    …Anti-Social Behaviour Order、反社会的行動禁止命令。イギリスで1999年に制定された。命令に違反すると最高で懲役五年の刑罰が適用される。本来は罰則ではなく加害者が二度と迷惑行為をしないようにするためのルールであり、フーリガンなど常軌を逸した行動をする若者を取り締まる目的で導入されたが、近年は騒音や不法投棄など迷惑行為全般に適用している。

     

     

    SHAD SANDERSON銀行。SherlockはVan Coonのオフィスへやってきて、秘書の横に立っていた。秘書のAmanda(※)はパソコンでカレンダーを調べている。

    Amanda: 金曜日に大連(※)から戻りました。そのまま続けて営業チームとミーティングがあったようです。

    SH: コピーをもらえるかな?

    Amanda: ええ。

    SH: 亡くなった日はどうかな?どこにいたかわかるか?

    Amanda: (画面を見ながら)すみません。その日は抜けてます。

    カレンダーの22日月曜日の欄は空白になっていた。Sherlockはイライラして顔を背けた。そこでAmandaが何か思い出した。

    Amanda: 領収書ならすべて保管しています。

     

    ※Amanda

    …演じている女優のOlivia PouletはBenedict Cumberbatchが当時付き合っていた彼女。二人は学生時代から10年以上交際していたが、2011年に破局した。(その後も交友関係は続いている)このドラマが放送されたのは2010年。

     

    ※大連

    …中国東北部遼寧省の南部に位置する地級市(地区クラスの市)。経済的重要性から省クラスの自主権をもつ副省級市にも指定されている。

     

     

    スコットランド・ヤード。DimmockがBrian Lukisの所持品の箱を漁っている。Johnは横に立っていた。

    Dimmock: 君の友人は…

    JW: あのね、あなたが何て言おうと僕は100%支持しますよ。

    Dimmock: …なんて傲慢な野郎なんだ。

    JW: おや、生ぬるいなぁ!みんなはもっとひどいことを言ってますよ。

    DimmockはようやくLukisの日記を見つけ出してJohnに渡した。

    Dimmock: これが欲しいっていうのか?ジャーナリストの日記を?

    Johnが受け取った日記をめくってみると、あるページに搭乗券が挟まっていた。それは大連(DLC)とロンドン(LHR)を結ぶものだった。

     

    ※DLC: Dalian Zhoushuizi International Airport、大連周水子国際空港

     LHR: London Heathrow Airport、ロンドン・ヒースロー空港

     

     

    SHAD SANDERSON銀行。AmandaはVan Coonの領収書を机に広げていた。

    SH: 彼はどんな上司だった、Amanda?感謝している?

    Amanda: ああ、いいえ。とてもそんな風には。Eddieに対して感謝してるのはお金に関することだけ。

    Sherlockは机の上の領収書がよく見えるよう床にひざまずいた。手袋を外していると机の上に高級そうなポンプ式のハンドクリームが置いてあるのが目に入る。

    SH: そのハンドクリームもね。彼からもらったんだろう?

    髪に留めたヘアピンをいじりながらAmandaは驚いて彼を見た。書類を探っていたSherlockはその中からタクシーの領収書を取り上げた。2010年3月22日10時35分、金額は£18.50(※約2,700円)。それをAmandaに手渡す。

    SH: これを見て。亡くなった日に家からタクシーに乗ってる。18ポンド50。

    Amanda: 会社へ向かってたんじゃ。

    SH: ラッシュ・アワーじゃない、時間を見て。中途半端な時刻。18(ポンド)で行けるのは…

    Amanda: ウエスト・エンド(※)。そう言ってたのを憶えてます。

    Sherlockは同じ日付にロンドン地下鉄のピカデリー駅(※)で発行された切符を見つけ、Amandaにそれを手渡した。

    SH: 地下鉄。ピカデリーの駅で発行されてる。

    Amanda: じゃあ会社へ戻るのに地下鉄を使ったってことですか?街へ出るときはタクシーを使ったのに、地下鉄で帰った?

    SH: (まだ領収書を探りながら)何か重い物を運んでいたからだ。エスカレーターで荷物を持ち上げたくなかったんだろう。

    Amanda: 運んでた?

    SH: ピカデリー駅近くのどこかへ。荷物を下ろして届けてから…

    そしてまた別の領収書を見つけるとそれを見ながら立ち上がった。それは“Piazza Espresso Bar Italiano”のものだった。

    SH: 腹を空かして。寄り道をした。

     

    ※ウェストエンド

    …ロンドン中央部の主要な劇場・商店などのある地区。

     

    ※ピカデリー

    …切符では“Picadilly”と綴られているが、ただしくはPiccadilly。ロンドンの中心近くの大通りに位置する。

     

     

    ロンドン中心部の通り。しばらくしてSherlockはエスプレッソ・バーを見つけ、そこを通り抜けながら大声で自分に語りかけていた。

    SH: 駅へ向かう途中、ここでランチを取ったんだな、じゃあどこから向かってきたんだ?タクシーでどこに降りた…?

    考えに夢中になって歩き回っていると背後からやって来た同じく周りを見ていない人物にぶつかってしまった。それはJohnで、Lukisの日記を熱心に見ていたのだった。Sherlockはぶつかるとうめき声を立て、Johnはそこに彼がいることに驚いた。

    JW: そうか。

    SH: (早口で)Eddie Van Coonは殺害された日、ここに荷物を運んできた-あのスーツケースに隠されていた何か。僕は情報の断片をうまいこと組み合わせて一枚の絵にすることができたんだ…

    JW: Sherlock…

    SH: …クレジットカードの明細、領収書。中国から戻って、それからここに来たんだ。

    JW: Sherlock…

    SH: この通りのどこか。近くのどこかだ。どこだかわからない、でも…

    JW: (道の向こう側を指して)その店はあっちだ。

    SherlockはJohnが指した店の方へ視線を向け、顔をしかめながらJohnを見た。

    SH: 何でわかるんだ?

    JW: Lukisの日記。(中を見せながら)彼もここに来てたんだ。住所が書いてある。

    そう言うとJohnは店の方へ歩き出した。

    SH: おお。

    Sherlockも後をついて歩き出した。

     

     

    死を呼ぶ暗号 3

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    original transcripts by Ariane DeVere